地方の事情 [ひとりごと]
愛用の椅子
一昨年まで。新しく増築した「隠居部屋」。縁側もあり、いつも日中は愛用の椅子に座り通る人や車を見ていた。近所の友人たちも立ち寄って、座りながら話に花が咲いていた。
1日に3回は通る道なので、その都度様子を眺めていた。お、おばあちゃん。今日も元気だね。
昨年。春頃まではいつも通りだった。厚手のニットのカーディガンを着て、楽しそうに外を見る。
夏が始まる頃かな?姿が毎日から「時々」見られるようになる。座ってるのも疲れる?暑いから?
秋口。姿が見えなくなる。冬。大雪で屋根が雪害を受けるほど。でも誰もいない。
今年に入っても状況は変わらず。雪が溶け、大きく曲がった屋根も錆びている。補修の手は入らない。
主はどうしているんだろ。桜も咲いたのに。
一昨日。銀行に行くとき「解体」が始まっていることに気づく。
さっき。重機の前に愛用の椅子。
きっと神隠しではない。施設に入ったか?召されたか?もうあのおばあちゃんを見ることはないんだ。
これが地方の現実。我が家の周辺でも、空き家、解体中、自然崩壊の家々が多い。
空き家問題が議会でも取り上げられるほど喫緊の課題に。うちだけじゃないんだろう。
全国の空き家は、どのくらいの数になるんだろう?住んでた人たちは??
家は「生き物」で、中に人が住んでいれば多少手入れが悪くてもシャンとしている。
ところが、何かの事情で空き家になると、たちまち劣化が始まる。ものすごい勢いで。
家も分かるんだ。もう、守るべき人はいなくなったんだな、と。
雪で押しつぶされたり、倒壊したり。お隣さんも気が気でない状況に。
人口減少で、商店街が「シャッター通り」になるのは何年も前から見てきた。
今度は民家。いよいよ、限界に近づく地方。静かに、確実に消滅する。
万物は流転する。そうだね。仕方ないか。
街も人間も。
2022-06-11 16:29
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